🐶 ゴールデン・レトリーバー誕生秘話:スコットランドのツイードマウス卿と繁殖記録

ゴールデン・レトリーバーの誕生秘話を象徴するイメージ。19世紀スコットランドでツイードマウス卿が残した繁殖記録と祖先犬たち。 いぬまにあ 🐕犬の生態を学ぶ
19世紀スコットランドで誕生したゴールデン・レトリーバー。その起源は、ツイードマウス卿の繁殖計画と記録に残されています。

「家族に優しい犬」として世界中で愛されるゴールデン・レトリーバー。
その温厚で賢い性格は、多くの家庭だけでなく盲導犬や介助犬といった分野でも高く評価されています。
しかし、この犬種がどのように誕生したかをご存じでしょうか?

その起源は19世紀のスコットランドに遡り、ツイードマウス卿(Dudley Marjoribanks, 1st Baron Tweedmouth) が残した繁殖記録に詳しく記されています。
今回は、その史実に基づいた「ゴールデンレトリーバー誕生の物語」を解説します。

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19世紀スコットランドと狩猟文化

19世紀のスコットランド貴族社会では、狩猟が重要な社交・娯楽の場でした。
特に、湿地や湖での狩猟には「回収犬(レトリーバー)」が欠かせませんでした

当時のレトリーバー犬種はまだ固定されておらず、各地の貴族や紳士が「理想の狩猟犬」を目指して独自の繁殖を行っていました。


起源の手がかり――黄色の子犬

ゴールデンレトリーバーの起源については長く議論がありましたが、現在最も広く受け入れられている説は以下の通りです。

  • 1865年:ツイードマウス卿が ウェービー・コーテッド・レトリーバー(Wavy-Coated Retriever) を購入。
  • そこから生まれた珍しい 黄色の子犬「Nous(ヌース)」 が「始祖」となったとされる。

この黄色の子犬が、ゴールデンレトリーバーの血統を築く出発点となりました。


ツイードマウス卿と「黄色いレトリーバー」

ツイードマウス卿はスコットランド高地の領主で、犬の繁殖に熱心でした。
彼は自ら 繁殖記録帳(Stud Book) をつけ、交配の経緯を克明に記録しています。

その中で最も重要なのが 1868年 の交配記録です。

  • Nous(雄):毛色が黄色のウェービー・コーテッド・レトリーバー。珍しい個体だった。
  • Belle(雌):ツイード川流域にいた ツイード・ウォーター・スパニエル(すでに絶滅)。水辺での作業能力に優れていた。

この交配によって生まれた子孫たちが、のちのゴールデンレトリーバーの基盤となります。


血統の組み合わせと特徴

ツイードマウス卿はさらに改良を重ね、以下の犬種を計画的に導入しました。

  • アイリッシュ・セター:外見の美しさと活発さを加えるため。
  • ブラッドハウンド:優れた嗅覚を取り入れるため。
  • セント・ジョンズ・ウォーター・ドッグ(ニューファンドランド系):水中作業能力の強化。

これらの血統を組み合わせることで、
「賢く、穏やかで、回収作業に優れた犬」 という理想像に近づいていきました。


繁殖記録の公開と誕生の証拠

長年、ゴールデンレトリーバーの正確な起源は不明とされていました。
しかし 1952年、ツイードマウス卿の子孫が保管していた 繁殖記録帳 を公開。

そこに残された交配の詳細が決定的な証拠となり、
ゴールデンレトリーバーが偶然ではなく 計画的な繁殖によって誕生した犬種 であることが明らかになりました。


世界への広がり

20世紀に入ると、ゴールデンレトリーバーはその外見と性格から人気を博しました。
イギリスをはじめ、アメリカ・カナダへと広がり、家庭犬・作業犬として世界中で普及。

現在では日本を含め、世界で最も人気のある犬種のひとつとなっています。


まとめ

ゴールデンレトリーバーの誕生は、

  • ウェービー・コーテッド・レトリーバーから生まれた黄色の子犬「Nous(ヌース)」
  • 絶滅してしまったツイード・ウォーター・スパニエルとの出会い
  • セターやハウンド系の血を取り入れた改良

といった、いくつもの血統の融合から始まりました。

19世紀スコットランドのツイードマウス卿が残した繁殖記録は、
「狩猟に役立つ犬をつくりたい」という思いから出発し、やがて
“家族に寄り添い、人と生涯をともに歩む黄金の犬” へとつながっていきます。

今日も世界中で愛されているその姿は、150年以上前に紡がれた温かな物語が、今も生き続けている証なのです。

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