東京消防庁のワッペンに描かれた犬
東京消防庁の 特別救助隊(ハイパーレスキュー)。
その精鋭隊員たちが肩につけるワッペンや、救助工作車のドアには、一頭の犬の姿が描かれています。

それが、スイス・アルプスで数多くの人命を救った セント・バーナード犬「バリー号」 です。
東京消防庁:ワッペンの由来
セントバーナード犬「バリー号」は、アルプス山中で15年間に40余名もの人を救助したといわれ、世界中にその名を知られています。人命救助のためにあらゆる困難を克服し、災害に立ち向かう特別救助隊の姿が「バリー号」のイメージと重なることから、セントバーナード犬が東京消防庁各救助隊のシンボルとされました。
出典:東京消防庁各救助隊のシンボルの由来
バリー ― 世界で最も有名な山岳救助犬
1800年頃、スイス・サン・ベルナール修道院で生まれたバリー。
現在のセント・バーナードの祖先にあたる犬種で、体重40〜45kgと現代の大型犬より小柄でした。

彼は修道士と共にアルプスの雪山を巡り、遭難者を発見して救助に従事しました。
その14年の生涯で 40人以上の命を救った と伝えられています。
伝説の救助 ― 少年を背に運んだバリー
バリーの数々の救助記録の中でも、最も有名なのが 少年救助の逸話 です。
ある凍てついた洞窟で、凍死寸前で眠る少年を発見したバリーは、
少年に覆いかぶさって体温で温めた後、自らの背中に乗せて修道院まで運んだ
少年は奇跡的に助かり、両親のもとに帰ることができたと伝えられています。
一方で「母親は雪崩に巻き込まれて亡くなっていた」という悲しい説もあり、この物語の真偽は今も議論されています。
しかし、動物心理学者ペーター・ケイトリンは著書でこう記しています。
最高の犬にして最高の動物はバリーである。
バリーは首の周りに小さな籠をつけて、嵐の日にも吹雪の日にも毎日のように山を巡って、不運にも雪崩の下敷きになった遭難者を捜索した。
遭難者を雪の下から掘り出して蘇生させ、自分の手に負えないときにはすぐさま修道院に駆け戻って修道僧に助けを求めた。
バリーは何人もの人々の命を救った。
とても愛情深い性格で、救助した少年を背中に乗せて修道院まで運んでいくときにも、少年は何も恐れることなくバリーに身を委ねることができた。
— ペーター・ケイトリン『Complete Study on Animal Instinct』
首の「樽」の神話 ― 救助犬の象徴はどこから生まれたのか?
セント・バーナード犬といえば、首に小さな木樽を下げて雪山を歩く姿を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、この「樽」のイメージは、実際の救助活動を反映したものではなく、19世紀の美術作品から広まった神話です。
絵画から生まれた「樽」
1820年頃、イギリスの画家 エドウィン・ランドシーア(Edwin Henry Landseer) が描いた
『Alpine Mastiffs Reanimating a Distressed Traveler』 という作品において、
セント・バーナード犬の首に小樽が描かれました。
この絵は大きな反響を呼び、ヨーロッパ中で「セント・バーナード=首に樽」というイメージが定着。
やがて観光ポスターや物語、映画などを通して世界中に広がり、今日に至るまで「救助犬の象徴」として根付いています。
実際には存在しなかった「樽」
一方、スイス・ベルン自然史博物館は公式パンフレットで、次のように明言しています。
「小樽は最もよく知られたバリー伝説であり、実際に犬が首に樽を下げていた証拠は存在しない」
— Bern Natural History Museum, Barry – Facts & Myths
つまり、バリーや他の救助犬が実際に樽を使って遭難者を助けていたという記録はなく、
あくまで後世に作られた「神話」だったのです。
伝説では「ブランデー」
- 樽にはブランデーなどの蒸留酒が入っていて、
遭難者に飲ませて体を温め、意識を回復させるために使われた――
というのが伝説のストーリーです。 - 実際、19世紀の観光ガイドや小説では「バリーがブランデーの樽を運んでいた」と語られることが多く、これが世間のイメージを形作りました。
しかし実際には…
- 医学的に見ると、凍傷や低体温症の遭難者にアルコールを与えるのは逆効果で、体温を下げる可能性すらあります。
- 修道院の記録にも「犬が酒樽を持ち歩いた」という事実はなく、スイスの修道士も「そのようなことは一度もない」と公式に否定しています。
つまり、樽の中身は「ブランデー」という物語上の設定であり、史実では存在しなかったというのが結論です。
それでも「小さな樽=勇敢な救助犬が運んでくる温かい命の象徴」として、観光ポスターやフィギュア、映画にまで描かれ続けています。
樽が持つ象徴的な意味
それでも「首の樽」は、遭難者に温かい飲み物を与えるイメージと結びつき、
勇敢さ・安心感を表すシンボルとして現在も描かれ続けています。
ベルン自然史博物館の展示でも「事実と神話」の両面が紹介されており、
観光・文化の中で「樽のセント・バーナード」が一種のブランドとして扱われていることがわかります。
バリーの晩年と保存
一部では「遭難者にオオカミと間違われて殺された」との伝説もありますが、史実ではありません。
実際には任務を12年全うした後に引退し、ベルンで余生を過ごし14歳で亡くなりました。
死後、バリーは剥製にされ、現在もベルン自然史博物館に展示されています。
その姿は「命を救う犬」として後世に語り継がれています。

バリーの名を継ぐ伝統
バリーの偉大な功績は、ただの歴史上の逸話として終わりませんでした。
彼の名は、今もスイス・サン・ベルナール修道院で生き続けています。
修道院では、飼育されるセント・バーナードの中に必ず 「バリー」という名を与える伝統 が守られており、
その名が世代を超えて受け継がれているのです。
さらに2004年には、セント・バーナードの保護と繁殖を担うために 「バリー財団(Foundation Barry du Grand Saint Bernard)」 が設立されました。
この財団は、セント・バーナードという犬種の保存と教育活動を通じて、バリーの精神を後世に伝えています。
彼の名前は詩や小説にも登場し、1977年にはディズニーがテレビ映画 「Barry of the Great St. Bernard」 を制作するなど、世界中で語り継がれています。
バリーは今や「動物と人間の絆」を象徴する存在であり続けているのです。
日本に受け継がれるバリーの精神
19世紀初頭、アルプスの雪山で40人以上の命を救った山岳救助犬バリー。
その精神は、遠く離れた日本の消防・救助活動にも受け継がれています。
東京消防庁の 特別救助隊(レスキュー隊) では、オレンジ色の救助服の左肩や救助車両に、セント・バーナード犬の紋章が掲げられています。
これは「人命救助のためにあらゆる困難を克服し、災害に立ち向かう」という理念を象徴しており、隊員たちが活動する姿とバリーの生涯が重ねられているのです。
また、日本では1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに災害救助犬が全国的に導入されました。
ジャーマン・シェパードやラブラドール・レトリバーに加え、柴犬やコーギーといった小型犬も活躍し、
近年ではセンサーや心電計測機能を備えた 「サイバー救助犬」 の研究も進んでいます。
バリーが残した「人命を救うために生きる」という精神は、
現代の救助犬や東京消防庁の救助隊員にしっかりと息づいているのです。
まとめ ― ワッペンに込められたメッセージ
東京消防庁の救助隊員が身につけるワッペンに描かれたセント・バーナードは、200年前に人命を救った「バリー」そのものです。
それは 「あらゆる困難に立ち向かい、人命を守る」 という救助活動の理念を象徴し、
現代の救助隊員たちに受け継がれる使命の証となっています。
バリーの生涯は、私たちに「動物への感謝と敬意」、そして「人と犬が共に命を支える」普遍の価値を教えてくれます。
#セント・バーナード #山岳救助犬 #東京消防庁シンボル #バリー #使役犬
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