アラスカでは毎年10月、ひときわ“お腹が大きい”クマが主役になります。
冬眠前にどれだけ太ったかを競う、その名も 「ファット・ベア・ウィーク（Fat Bear Week）」。
「太った方が勝ち」というなんとも平和なこのイベントは、
野生動物の生きる力と、自然との共生の大切さを伝える環境教育イベントです。
2025年の優勝は、体重およそ540kgのオス熊「チャンク（Chunk）」🐻。
過去のケガを乗り越えて栄冠を勝ち取った姿に、
世界中の人々が“愛すべきおデブ王”へ拍手を送りました。
🤖💬熊の知能はどれくらい高い？
🍣 サケを食べて太るのは「生きるため」
イベントが行われるのは、アラスカ州カトマイ国立公園（Katmai National Park and Preserve）。
ここには約2,000頭のヒグマが生息しており、
ブルックス川の滝に遡上してくるサケを狩る姿が毎年の風物詩になっています。
ヒグマにとって太ることは「生きるための戦略」。
冬眠中の5か月間、食事も水も取らずに過ごす彼らにとって、
脂肪は命をつなぐ唯一のエネルギー源なのです。
1日に食べるサケの量は最大45kg──。
彼らは夏から秋にかけての短い期間に、できる限り栄養を蓄えなければなりません。
「ファットベアウィーク」は、そんな生態を“楽しく学ぶ”ために生まれたイベントです。
🏆 2025年の王者「チャンク（Chunk）」誕生！
2025年大会を制したのは、堂々たる腹回りを誇るオス熊「チャンク（Bear No.32）」。
体重はおよそ540kg（約1,200ポンド）。
過去にあごを骨折しながらも回復し、再び滝の主の座に返り咲きました。
決勝戦では、連覇を狙っていたメス熊「グレイザー（Bear No.128）」との激戦。
世界中から数十万人がオンライン投票に参加し、
最終的にチャンクが約9万6,000票を獲得して初優勝を果たしました。
「太ること」が称えられるこのイベントは、
“生きるための努力”を笑顔で称える、ちょっと風変わりであたたかいお祭りです。
🧬 「かわいい」だけじゃない、生態系のメッセージ
ヒグマたちの爆食と肥満は、生態系の健康度のバロメーターでもあります。
サケが豊富に戻る年はクマたちが太り、
サケが減れば飢えたクマが増える。
つまり、「クマが太れる環境＝海と森が健全につながっている証」なのです。
このイベントを主催するアメリカ国立公園局（NPS）は、
「自然を見守り、理解し、尊重すること」が保全の第一歩だと伝えています。
観光客が直接触れず、カメラ越しに見守るスタイルは、
まさに“距離を保ちながら共生する文化”の象徴です。
📸 世界中が見守る“おデブたちの秋”
イベント期間中、Explore.orgではライブカメラが稼働し、
滝で魚を狩るクマたちの姿を24時間配信しています。
川の中でサケをくわえたままドヤ顔するチャンク、
のんびり昼寝するグレイザー──どの瞬間も自然そのままの美しさ。
「彼らの生き様を見て笑い、知り、守る」
ファットベアウィークは、そんな“優しい観察の文化”を世界に広めています。
🏔️ 日本の熊にも、同じ“余裕”を
一方、日本ではここ数年、熊の出没ニュースが急増しています。
その原因の多くは、人間が熊の生活圏へ踏み込みすぎたことにあります。
山菜採りや観光目的で安易に立ち入ったり、
宅地開発や伐採で森を分断したり──。
結果的に、熊たちはエサを求めて人里へ出てきます。
そして、被害にあうのはいつも、
昔から熊と共に暮らしてきた地元の住民たちです。
🚨 駆除する人々は“敵”ではない
熊も動物も死んでほしくない、殺してほしくない
ほとんどの人間はそう思うのではないでしょうか？
出没した熊を駆除する人々は、
けっして楽しんで命を奪っているわけではありません。
彼らは、人の命を守るために最前線に立つ人たちです。
ただ私たち都市部の人間がその現実を「遠い話」として傍観していては、
同じ悲劇が繰り返されます。
だからこそ、
熊の出没範囲にいない私たちにできるのは、
“知ること”と“関心を持ち続けること”です。
アラスカのように、
「見守る・学ぶ・距離を取る」文化を育てることが、
人と熊の共存につながる第一歩になるはずです。
🤖💬🐾 あなたの“ボーダー”を必ず決めてほしい——アニマルウェルフェアとは何か？
🪶 出典・参考
- CNN Japan｜冬眠前に「爆食」 最も太ったクマを選ぶ恒例イベント アラスカ
- Explore.org｜Fat Bear Week 公式サイト
- National Park Service｜Katmai National Park and Preserve
- AP News｜Chunk crowned 2025 Fat Bear Week champion
🐾 まとめ
太るほど人気者になるクマたち。
笑ってしまうようなコンテストの裏には、
「自然を尊重し、野生を守る」ための静かなメッセージが込められています。
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